法人化 vs 個人事業

Incorp. vs Non-incorp.

-法人化 vs 個人事業-

美容室・サロンを経営する上で法人化すべきか個人事業主として運営すべきか、それぞれのメリットデメリットをご紹介します。どちらも一長一短ありますが、店舗の規模や将来ビジョン、従業員数等を踏まえると、どちらの方が良いか判断できます。
美容室のほとんどは個人事業として運営されていますが、実際は法人化したほうがメリットが多い例も多数存在します。
H2 Bizでは、公認会計士・税理士としての多角的な視点から、美容室の皆様にとっての法人化のメリットデメリットを洗い出し、法人化すべき場合は法人化のご支援、その後の必要な体制整備まで幅広いご支援を提供しています。

法人化 vs 個人事業

個人事業主

株式会社や持分会社(※)としての法人格を持たず、個人として事業を行う場合は個人事業主となります。個人事業主の特徴は以下の通りです。

(※)持分会社とは会社法において株式会社のほかに会社形態として認められている合名会社、合資会社、合同会社の総称で、ここでは詳細の説明は割愛させていただきますが、中でも合同会社は株式会社と同様会社の所有者は有限責任であり設立費用は株式会社と比較して安いため近年法人形態として採用する会社が増加しています。なお、株式会社が資本金1円から設立できるよう法改正が行われたことに伴い過去に存在した有限会社制度は廃止され、現在有限会社を新たに設立することはできません。

●法人格を持たないため事業上の責任は事業主個人の無限責任となる
●事業で得られた利益は個人に帰属する
●事業で得られた所得(税務上の利益)に対する税金は個人の所得(所得税法上の事業所得)として個人で確定申告を行う。
●社会保険は個人として国民健康保険や国民年金に加入する
●所得に対する税率は超過累進税率により決定される。

法人

株式会社や持分会社を設立して会社の代表者(株主)となり、会社の事業としてサロン経営を行う場合の特徴は以下の通りです。
●法人として事業活動を行うため、事業で生じた責任は会社に帰属し、株主は出資した資金の範囲内で責任を負う(ただし、例えば借入などで役員個人が債務保証を行っていた場合や役員として訴訟を受けた場合等は個人としても責任を負う場合があります。)
●事業で得られた利益は会社に帰属し、経営者は給与として利益を受け取る
●事業で得られた所得に対する税金は個人とは別に会社として法人税法に則り確定申告を行う
●会社として社会保険に加入し、役員や従業員は健康保険組合や厚生年金に加入する
●所得に対する税率はほぼ一定(おおまかに中小企業と大企業で適用される税率は異なりますが、その壁を超えるまでは一定の税率が適用されます)

個人事業主と法人それぞれのメリット・デメリット

●税務面
法人:▲ 個人:▲
サロンまたは会社の利益規模や個人としてのその他の収入の有無等により一概にどちらが有利ということを断定することはできませんが、一般的に個人としての収入が300万円を超える場合には法人化する方がメリットは大きいといわれています。所得税法では所得(利益)が多いほど適用税率が高くなり、また経費としての計上要件もかなり限定されること、法人税の方が繰越欠損金の繰越期間が長期になることなどから、どちらがより税務面で有利になるかをシミュレーションすることをお勧めします。
なお、サロン経営以外でも収入がある場合には法人を設立して所得を分散する方が所得税の適用税率を低く抑えられますので法人成り(後述します)することを考えるべきです。

●社会保険
法人:〇 個人:▲
2021年現在個人として加入する国民年金の年間保険料は約19万9千円で別途国民健康保険への加入が必要です。一方法人として協会健保の健康保険及び厚生年金に加入した場合の保険料は標準報酬月額により決定されますが、保険料を最も安くした場合(役員報酬を低く設定した場合)の保険料は国民年金よりも安く、将来受け取る年金の金額は多くなります。こちらも役員報酬として受け取りたい金額や将来の年金受取金額をシミュレーションすることをお勧めしますが、個人として社会保険料を納めるよりも法人化して社会保険料を支払う方がお得であることが一般的です。

●人材確保
法人:◎ 個人:×
サロン経営において優秀な人材の確保は大きな課題ですが、一般的に法人化することで個人事業主として求人を行うよりも高い応募率が見込めます。同じ事業を行っている会社でも応募者からは法人として登記され社会的信用のある会社として見てもらえるためですが、この点については合同会社よりもより知名度の高い株式会社としての法人化を行った方が有効性は高いと考えられます。

●手続面
法人:× 個人:〇
個人事業主として事業を行う場合には税務署への開業届や青色申告の承認申請書等の提出を行いますが、法人ではこれらに加えてそもそもの設立登記に関する手続きや社会保険に関する手続き、法人税の申告に関する手続き等が必要となります。また設立に際しては登録免許税や定款認証手数料(株式会社の場合)、赤字の場合でも発生する地方法人税(住民税均等割)等の費用も余分にかかることになります。

法人成り

すでに個人事業主として事業を行っている場合でも株式会社や持分会社として法人化(法人成り)することで、上述した法人のメリットを享受できるほか、法人成りしてから2年間は売上が1,000万円以上でも免税事業者として消費税の納付が原則的に減免されるという大きなメリットがあります(一部例外となる場合もあります)。
これは消費税として顧客から受け取った売上の10%がそのまま利益となるためかなり大きなインパクトがあります。ただし消費税に関して2023年10月よりインボイス制度が導入されることに伴い当該免税の恩恵が受けられなくなる予定ですので、法人成りをお考えの場合はお急ぎください。